被害者との面会アレンジと感染対策
警察官や検察官から被害者の連絡先を教えてもらった場合,弁護人は即座に被害者に連絡すべきです。警察官や検察官から弁護人に対し,「被害者が弁護士に連絡先を教えても良いと言っています。連絡先の携帯電話の番号は次の通りです。」と連絡があったならば,その連絡の直前に警察や検事は被害者とこの件について話していたはずです。そこで,間を置かずに被害者に連絡するなら,知らない電話番号の着信に対しても,被害者は弁護士からの連絡かもしれないとして電話に出てくれ,警察官や検察官と話していたことの流れの延長で引き続き話をしてくれることが多く,弁護人との会話もスムーズに進むことが多いです。これに反して,せっかく警察官や検察官から被害者の連絡先を教えてもらったにもかかわらず,忙しさにかまけてすぐに電話せず,極端な場合,数日間電話をしなかったならば,被害者はどう思うでしょうか。
被害者が,意を決して警察官や検察官にご自身の電話番号を弁護人に伝えることを許可し,緊張感を持って構えて弁護人の電話を待っていたけど一向に電話がかかってこない。そのとき,被害者は「無視された」,「私との話よりも他の仕事が忙しいらしい」など,弁護人に対して不信感を抱くかもしれません。そこまでの不信感を抱かなくても,数日後に唐突に弁護人から電話連絡があったとき,普段の社会生活を送っている被害者にしてみれば,そのような唐突な電話に対して「今は話せないから後でかけてください」などと返すことも多いのです。警察や検事との話の中で,その流れの延長ですぐに弁護人から電話がかかってくる場合とは,まったく対応が異なってくる可能性があります。ここでも,やはり,示談交渉に臨むに当たっての誠意が弁護人に求められます。加害者の方もそのような誠意ある弁護士を自分の弁護士として選ぶべきでしょう。
次に,いよいよ被害者との面会アレンジに入ります。電話での示談交渉を希望する被害者もいますが,原則的には実際に面会して話し合いをすべきです。電話ですと,被害者が事件によってどのような精神的・肉体的な苦痛を受けたのか,または経済的にも負担となっているかなど,その心情に即して具体的に話を聞くことが難しく,人柄も十分に伝わらないからです。
昨今の深刻なコロナ感染状況にあっては,面会を躊躇するケースも少なくないでしょう。被害者が弁護士と面会する機会に感染するのではないかという危惧に対する不安を可能な限り取り除き,面会の場所や時間帯,また,マスク着用や手洗い,除菌などを徹底すべきでしょう。駅前の混雑した場所や,面会場所に公共交通機関を使うような場所は避け,仮に電車等による移動が必要であっても,混雑する時間帯での面会を避け,一方で被害者の都合も優先的に考えるべきです。最も好ましいのは,被害者の指定する場所に,指定した時間に赴くようなアレンジです。弁護士の都合を被害者に押し付けてはいけません。場合によってはホテルなどの個室を用意する必要があります。被害者に会う前には検温し,会った際にその結果を被害者に教えて安心させることも必要でしょう。
どうしても,面会することを避けたいと申し出る被害者に対しては,オンラインによる示談交渉も選択肢に入れるべきです。弁護士はオフィスにてオンライン対応すべきです。たとえ,自宅でオンライン対応する場合であっても,画像背景は白い壁とし,家族のものなどの姿や声がキャッチされないような配慮が必要です。守秘を徹底し,家族等に相談内容を聞かれないようにする,例えば個室にてイヤホンを使うなど,配慮するのはもちろんのことです。